事故当時、学校の教頭をしていました。教頭の職務というのは理不尽なくらいに激務で、休日返上も日常茶飯事でした。おそらくですが、校長よりも仕事量が多いです。
車にさほど興味はなく、軽自動車ばかりに乗っていた私ですが、長距離運転になることや、事故にいくらかは強いという他人のアドバイスを受け、スズキのソリオに乗ることにしました。
そんな9月の土曜日、例によって休日返上で職場に向かって車を走らせ、土曜日なので交通量は少なく、運転しやすくもあり、当たり前のように交差点の信号待ちの停車をしていました。少ない交通量の中、後方から車が迫っているのはルームミラーでわかりました。
しかし、特に気にもとめず、視線を前方に移しました。すると、ややあって、ガタンとかゴツンとかいう音とともに、私の車に振動が起こりました。その瞬間、何が起こったのか全くわからず、キョロキョロするばかりでした。そして、ルームミラーに「やってしまった。」という表情の後続車の若者の姿が映りました。その時、あー、追突されたんだと理解しました。
私は特に興奮することもなく、車から降り、車後部の明らかな凹みを確認し、ちょうど近くに、整骨院の駐車場があったので、そこに自分の車を置くので、後続車の若者にも車を置くように促しました。
若者は、ボーッとした印象の19歳。気が動転しているようには見えませんでしたが、この人には事故処理はとてもできないだろうとの判断で、私が警察に電話し、彼が洋菓子屋のインターンということもわかったので、その洋菓子屋に事故の経緯まで話し、出勤が遅れることまで伝えてやりました。
やがて警察が着き、事故記録を残し、あとは当事者間で保険屋を含めて解決するように促されました。そこまで、比較的にテキパキと動けたのは、追突されたのに、痛みなどは全くなく、気分も悪くなかったのです。教育者という立場もあり、加害の若者には、「今後、しっかり前方確認をするように…。」という教育的指導も行い、別れました。
具合も悪くなく、痛みもなかったので、そのまま学校に行き、仕事をすることにしましたが、交通事故を起こしたり、遭ったりした場合、管理職は事故者の分の事故報告を速やかに教育委員会にしなけれはなりませんでした。
今回の場合は自分自身のことだったので、事情聴取の必要がなく、スラスラと事故報告書も書けそうでした。ところが、不幸なことに、学校のパソコンやプリンタ調子が悪く、パソコンでの報告書が出来ず、手書きでせざるを得なくなりました。今思えば、それがのちのち響いたように思います。
報告書作成の最中に、時の上司である校長にも電話して事故に遭ったことを報告しました。校長は、私の状態を心配するとともに、今は具合が悪くなくても、整形外科あたりに通院した方がいいと促しました。私は、了解しつつも「体は丈夫ですからOKですよ。」といきがってみせました。
その日は、報告書作成が手書きで時間がかかり過ぎたこともあり、仕事はあまりできず、仕方なく帰宅して保険屋さんに連絡をして終わりました。痛みも何も感じぬままに一日も終えました。
ところが翌日の朝、背中から首にかけて、痛みというか「凝り」が感じられました。普通ではないと思ったので、日曜日で在宅医が少ない中、整骨院ではなく、整形外科に行きました。レントゲンとか、温湿布、電気治療などを施されましたが、骨や関節には全く異常はないとのことでした
。凝りを何とかしたいと、医者に伝えたところ、内服薬と「ヤクバンテープ」という鎮痛消炎の湿布を処方してもらいました。幸いなことに、その後、症状が悪化することなく助かりました。
事故後の処理については、若者側の保険屋さんがそつなく動いてくれたので、問題はありませんでした。ただ、一件だけ、こちらが苦言を呈したのは、19歳という未成年が引き起こした事故なのに、その保護者からの謝罪が無かったのは残念だった旨を、先方の保険屋さんに伝えたところ、速やかに母親から平身低頭の電話があったので、一件落着でした。
今回は被害者という立場でしたが、自分が加害者になることも想定し、走行する時も、停車する時も、十分な車間距離を取るように、それまで以上に心がけるようになりました。そして、停止時、後続車の停止に関して気を配るようになりました。
あっ、ぶつかる!と感じた時には、咄嗟に横向きになる…これがどのくらいの効果があるのかは甚だ疑問としては残るのですが…。
今後とも、心してハンドルを握ります。